コイン投げを行いその結果により結果が左右される、いわゆる「フリップ・コイン」カードはマジックの世界では赤のレアを中心に数多く存在しますが、一般にはその不確実性からトーナメントデッキでは見向きもされず、常にファンデッキ用の30円レアカードとなることを余儀なくされたカードである、と言っても過言ではありません。
これは、コイン投げというものが、イカサマを行わない限りは所詮勝率は50%であり、しかもマジックの赤のフリップ・コインカードの性質として、勝てばメリットがあるものの負けた場合には自分にも少なくないデメリットが降りかかることが普通だからです。
しかしながらマジックのエキスパンジョン「ミラディン」では、この前提を覆す驚くべきカードが登場しました。
このカード「Krark's Thumb(クラークの親指)」の能力は「あなたがコイン投げをする場合、代わりに2枚のコインを投げて1枚を無視する。
」というものです。これは単純に言ってコイン投げの勝率を50%から75%に引き上げることになるため、あるいはフリップ・コインカードを実用的なカードにできるかもしれません。
このページは、その可能性について考察します。
古のThe Darkで登場して最新8版にまで収録されている「Mana Crash(魔力激突)」は、「理論上はわずか1マナで第1ターンに20点を与えて勝利することも可能(ただしその確率は100万分の1以下)ですが、自分と相手の受けるダメージの期待値は同じ」という漢のカードです。Mana Crashのもたらす結果は試行1回につき次の通り。
フリップ結果 | 適用結果 | |
---|---|---|
対戦相手 | 自分 | |
表 | 表 | 終了 |
表 | 裏 | 自分に1点 |
裏 | 表 | 対戦相手に1点 |
裏 | 裏 | 双方に1点 |
すなわち明らかに
対戦相手がダメージを受ける確率 | = | 1/2 |
自分がダメージを受ける確率 | = | 1/2 |
終了する確率 | = | 1/4 |
であると言えます。このためダメージの期待値は(1/2)*(3/4 + (3/4)^2 + (3/4)^3 + ...)となり、この結果は理論上は約1.5になります(4回続けば約1.03)。
従って実質のMana Crashのダメージ期待値は両者ともに0〜2という所でしょう。
それでは「二枚投げ」の下では、この期待値はどのように変化するのでしょうか?
まず基本となるフリップ結果は、明らかに次のようになります。
フリップ結果 | 適用結果 | ||
---|---|---|---|
対戦相手 | 自分1 | 自分2 | |
表 | 表 | 表 | 終了 |
表 | 表 | 裏 | 終了させず続けるなら自分に1点 |
表 | 裏 | 表 | 終了させず続けるなら自分に1点 |
表 | 裏 | 裏 | 自分に1点 |
裏 | 表 | 表 | 対戦相手に1点 |
裏 | 表 | 裏 | 対戦相手に1点 |
裏 | 裏 | 表 | 対戦相手に1点 |
裏 | 裏 | 裏 | 双方に1点 |
明らかに対戦相手がダメージを受ける確率はやはり1/2であり、無条件で終了する確率は減じて1/8であるわけですが、ここでの最大の鍵は1/4の確率の「終了せず続けるなら自分に1点」にあると言えるでしょう。
つまり自分が「ダメージを受けたくないので終了」を選ぶ場合、Mana Crashにより自分がダメージを受ける確率はわずか1/4になります。これはこれでお得ではあるものの、反面、そこでフリップは終了してしまいそれ以上のダメージは与えられません。
端的に言って、そんな結果を選ぶような軟弱者は最初からMana Crashを使おうなどとは考えない筈です。すなわち、ここでは当然のごとく漢であるプレイヤーは自分だけがダメージを食らったうえで続ける方を選ぶことになると考えられます。
そのように考えると、結局Mana Crashを2枚投げした時の結果は、
対戦相手がダメージを受ける確率 | = | 1/2 |
自分がダメージを受ける確率 | = | 1/2 |
終了する確率 | = | 1/8 |
であると言え、驚くべきことにダメージを受ける確率はやはり双方1/2のままで、決して自分に有利に働くわけではありません(開発チームの慎重なリサーチが伺える結果です)。
ただし終了確率が1/4から1/8に減じることで、ダメージの期待値は(1/2)*(7/8 + (7/8)^2 + (7/8)^3 + ...)となり、この結果は理論上は約3.5になります(8回続けば約2.30)。
従って実質のMana Crashのダメージ期待値は両者ともに2〜4という所になります。
結論として、2枚投げはMana Crashの終了確率を1/4から1/8に減じ、双方のダメージ期待値を0〜2から2〜4に引き上げる効力があると言えるでしょう。…使う気になりますか?(笑)
神河謀反で「鏡の回廊」が出たため、親指を2枚置いて3枚投げることが可能になりました。その場合の結果は以下の通りです。
フリップ結果 | 適用結果 | |
---|---|---|
対戦相手 | 自分 | |
表 | 表表表 | 終了 |
表 | 表2裏1(3通り) | 終了させず続けるなら自分に1点 |
表 | 表1裏2(3通り) | 終了させず続けるなら自分に1点 |
表 | 裏裏裏 | 自分に1点 |
裏 | 表表表 | 対戦相手に1点 |
表 | 表2裏1(3通り) | 対戦相手に1点 |
表 | 表1裏2(3通り) | 対戦相手に1点 |
表 | 裏裏裏 | 双方に1点 |
すなわち終了確率が1/16で、双方の期待値はやはり1/2のままです。
これによるダメージの期待値は(1/2)*(15/16 + (15/16)^2 + (15/16)^3 + ...)となり、仮に16回続けば約4.83になります。
従って実質のMana Crashのダメージ期待値は両者ともに4〜5という所になるでしょう。
ちなみに同様の計算により、3個置いての4枚投げの場合は、32回続いて約6.55が期待され、ダメージ期待値は6〜7という所になるでしょう。4個置いて5枚投げになると…。
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||